ウクライナ人が西側諸国に発する当然の一言、「だから言ったのに」

 ウクライナ人が西側諸国に発する当然の一言、「だから言ったのに」

2022.02.25 

CNN



24日未明、筆者はこの歴史ある都市(リビウ)で目を覚ました。携帯電話の警告音がひっきりなしにうなり声をあげている。数日前から予想されていたロシアのウクライナ侵攻が、ついに始まったのだ。


通りには人影がなく、ひっそりと静まり返っていたが、夜明けの最初の光が差し込んでくるにつれ、不安と恐怖がその場を支配した。空襲警報が市内の要塞や教会に響き渡る。いかにもウクライナの文化的首都らしい風情のある丸石の街路にも、サイレンの音がこだまする。男性の声で、屋内に退避しガスの接続を遮断するよう指示が出た。人々はATM(現金自動出入機)の前に長い列を作ったり、まだ開いているうちに市場へ向かったりし始めた。


昼食を取ってからすぐ、カナダ大使館の車列がリビウの歴史地区を出て行くのが目に入った。同市には首都キエフから避難してきた大規模な外交官のグループが滞在していた。筆者が見かけた高位の外交官の1人は、すっかり動揺して口もきけないほどだった。


戦争が本格的にウクライナへ到来した。ほぼ8年前の同じ日には、「尊厳の革命」と呼ばれた民衆による蜂起が、ロシアの後ろ盾を受けたヤヌコビッチ政権を打倒した。2014年2月、数十人の勇敢な人々が、崩壊しつつある政権による銃弾で倒れた。そして今、新たな殺戮(さつりく)の現場がウクライナ本土に生まれようとしているかに見える。ロシアのプーチン大統領の命令を受けた軍隊によって。プーチン氏はいかなる犠牲を払っても、欧州における安全保障の地図を描き換えるつもりらしい。


今回の全面侵攻に衝撃を受けた西側の首脳もいるかもしれないが、24日未明に筆者がリビウ内外で人々と話した内容から判断すれば、ウクライナ人に驚く様子はほとんど見られない。あるのは「だから言ったのに」というような態度だ。


ウクライナ人は、西側のちらつかせる制裁があまりに弱いものとなるのを常に把握していた。この恐ろしい現実を抑止するだけの水準には達しないだろうと分かっていたのだ。


ゼレンスキー大統領は西側に対し、厳しい制裁措置を発動するよう数週間にわたって懇願し続けた。米国、カナダ、英国その他の首脳たちはそれについて威勢のいい言葉を発してきた。しかし結局のところ、長机を挟んだ会談も、シャトル外交も、プーチン氏を思いとどまらせるには至らなかった。遅きに失したロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認停止もそうだ。物議をかもすこのエネルギー施設には、巨額の資金が投じられている。


ニューヨークでは、新たな世界戦争を防ぐため設立された機関である国連が厳しい言説によって反応したが、それでも最終的には効果がないと判断されるだろう。ロシアは安保理によるいかなる行動に対しても拒否権を持つからだ。同国の歴代国連大使が常に笑いのたねにしている安保理の緊急会合の冒頭、グテーレス事務総長はこう言った。「プーチン大統領。軍隊を使ってウクライナを攻撃するのを止めなさい。平和の可能性を探りなさい」


予想できたことだが、ロシアの侵攻を受け、キエフ他各地の住民は安全地帯を求めて避難。道路では大規模な交通渋滞が発生した。


全軍による侵攻が展開する中、人道危機に対する懸念も深まるだろう。現地時間24日の午後3時、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長とともに臨んだ記者会見で、EUとしてロシア政府がウクライナでの「攻撃的行動」を追求するのを「可能な限り困難にする」と明言した。


安全を求めて避難したウクライナ人が、重い負担となってのしかかるかもしれない。近隣諸国はすでに難民の流入を受け入れる準備に着手している。イスラエルのメディアが報じたところによると、同国はウクライナ全体からの亡命申請者が最大で500万人に上る可能性があると推計している。


新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の結果、EUが行った国境封鎖は効果がなく弊害をもたらすものだった。その失敗の後では、一部の加盟国から不安の声が上がるのも無理のない話だろう。これらの国々は、ウクライナからの亡命申請者受け入れをめぐって、EUと意見を異にしている(ただドイツの閣僚の1人は、難民の「大規模な流入」があれば近隣諸国を助ける用意があると明かした)。


それでも、現時点でロシアの軍隊と大型兵器は依然としてウクライナの領土に存在し、多くの主要都市を脅威にさらしている。より大きな文脈では、世界秩序の重大な転換をも引き起こしかねない状況となっている。


プーチン氏の無慈悲な侵攻がこのような瞬間をもたらした。そして同氏を思いとどまらせようとする西側諸国の取り組みが失敗に終わった今、その結果を被っているのはウクライナ人だ。彼らは、まさに命がけの戦いを繰り広げている。


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