プーチン大統領、失脚の兆候 側近・諜報機関に不穏な動き…平和裏に政権交代画策か 「政変の予兆」「毒物や神経剤は常套手段」専門家
3/31(木)
夕刊フジ
苦戦が続くロシア軍はウクライナの首都キエフの軍事作戦を縮小すると発表したが、部隊を再配置して空爆や攻撃を続けている。ウラジーミル・プーチン大統領には正しい情報が伝えられていないとみられ、停戦交渉でも大きな障害となりそうだ。「裸の王様」のプーチン氏周辺では、側近や諜報機関、軍などによる「政変」の予兆があると専門家は指摘する。失脚劇は、どう実現するのか。
米国防総省のカービー報道官は30日の記者会見で、ロシア軍がキエフ周辺に集めた部隊の20%弱を再配置し始めたとの分析を明らかにした。一部はベラルーシに移動しているが、部隊をロシアに戻す動きはなく圧力を弱めていないと指摘した。
ロシア軍は武器や食料の補給も不十分とされ、戦況は泥沼化が進む。西側諸国の制裁でロシア経済は機能不全状態だが、ホワイトハウスのベディングフィールド広報部長は同日、軍幹部や高官が「怖くて真実を伝えられない」ため、プーチン氏には誤った情報がもたらされているとの分析を明らかにした。
米メディアによると、連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のトップでもあるセルゲイ・ショイグ国防相らとの関係に緊張が走っている。ショイグ氏は一時、消息不明となったが、政権周辺ではアナトリー・チュバイス大統領特別代表が辞任。ロシア連邦保安局(FSB)のセルゲイ・ベゼダ氏らが自宅軟禁された。
ウクライナ国家安全保障・国防会議(NSDC)のオレクシー・ダニーロフ書記は、ロシア軍の主要幹部らが公の場から姿を消したのは、ロシア当局がウクライナでの失敗の責任者を調査しているとの見方を示す。
「一連の動きは、何らかの政変の予兆ではないか」とみるのは、元公安調査庁職員として、ロシアや国際テロ部門などを歴任した日本戦略研究フォーラム政策提言委員の藤谷昌敏氏。
「ロシアの諜報機関内部には米中央情報局(CIA)や英秘密情報部(MI6)の内通者が複数いると考えてよい。また、ウクライナの諜報機関も前身はロシアと同じソ連の諜報機関で、元同僚など個人的人脈もある。プーチン氏の独断で孤立化を招いたことや厳しい経済制裁に耐え切れず、体制や利権を維持しようという動きが政権内部にあっても不思議ではない」
クレムリンの「宮廷クーデター」の兆候も報じられ始めた。英紙タイムズ(電子版)は23日、「プーチン氏に対するFSBによるクーデターのリスクが毎週、高まっている」とするロシア諜報機関中枢の内部告発者の見方を報じた。「ロシアは追い詰められている」というFSBの内部文書も流出している。
ウクライナ国防省情報総局は公式フェイスブックで、政財界エリートの間で反プーチンの動きがあり、FSBのアレクサンドル・ボルトニコフ長官を「プーチンの後継者と考えている」と発信する。
ソ連国家保安委員会(KGB)やFSB長官経験もあるプーチン氏は、軍や治安機関出身者「シロビキ」の強固なネットワークで守られている。だが、ソ連時代からフルシチョフ元首相ら指導者が突然失脚することは珍しくない。
藤谷氏は「政権内部は、民衆の蜂起などの形で政権交代劇が起きることは利権を失うので避けたいと考えているだろう。プーチン側の守旧派と、反プーチンの新興派が綱引きした上で、『大統領の急病』などの口実で平和裏に政権交代する方向で諜報機関が画策しているとみられるが、最悪の場合、軍事クーデターの可能性も否定できない」とみる。
2018年に西側諸国への協力疑惑を着せられたGRU将校と家族が、20年には「反プーチン」の野党指導者のナワリヌイ氏が神経剤「ノビチョク」で襲撃された。
藤谷氏は「GRUの秘密工作部隊は毒物や神経剤を使うのが常套(じょうとう)手段で、1970年代にはドアノブに塗布し、爪先から体内に入る猛毒も駆使できたほどだ。ソ連時代のスターリンの死因も定かではなく、諜報機関による暗殺説もある。プーチン氏も警戒しているだろうが、自ら作った世界なので仕方がない面もある」と指摘した。
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