北朝鮮 弾道ミサイル2発発射 EEZ外に落下と推定 ことし4回目
2022年1月17日 14時44分
NHK
17日午前、北朝鮮から弾道ミサイル2発が東の方向に発射されました。
日本のEEZ=排他的経済水域の外側に落下したと推定され、これまでのところ日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていないということです。
北朝鮮による弾道ミサイルの発射はことしに入って4回目で、防衛省は引き続き情報収集と分析を進めています。
防衛省 “EEZ外に落下と推定”
防衛省によりますと、17日午前8時49分ごろと52分ごろ北朝鮮西部から弾道ミサイル2発が東の方向に発射されたということです。
最高高度はおよそ50キロで、通常の軌道であれば飛んだ距離はおよそ300キロと推定されています。また落下地点は北朝鮮の東岸付近で日本のEEZ=排他的経済水域の外側と推定されるということです。
これまでのところ日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていません。
北朝鮮による弾道ミサイルの発射は3日前の今月14日以来で、ことしに入って4回目です。
防衛省は北朝鮮が極めて高い頻度で新たな形での発射を行い秘匿性や即時性の向上、発射形態の多様化などを図っているとして、警戒・監視に万全を期すとともに引き続き情報収集と分析を進めています。
海上保安庁 “船舶への被害の情報なし”
海上保安庁は北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたという情報を午前8時54分に発表しました。
さらに海上保安庁は弾道ミサイルの可能性があるものはすでに落下したとみられると午前9時3分に発表しました。航行中の船舶に対し今後の情報に注意するよう呼びかけています。
また海上保安庁は日本周辺の海域で被害などの確認を進めていますが、これまでのところ日本に関係する船舶への被害の情報は入っていないということです。
今月14日以来 ことしに入って4回目
北朝鮮が弾道ミサイルや、その可能性があるものを発射したのが確認されるのは今月14日以来でことしに入って4回目です。
防衛省によりますと、前回は北西部から東方向に弾道ミサイル2発を発射しました。発射されたミサイルは固体燃料推進方式の短距離弾道ミサイルだとしています。
また最高高度は通常より低いおよそ50キロで、通常の弾道軌道だとすれば400キロ程度飛んで落下地点は北朝鮮の東岸付近、日本のEEZ=排他的経済水域の外側だと推定されるとしています。
岸田首相「誠に遺憾なことで強く抗議」
岸田総理大臣は自民党の両院議員総会で「けさも北朝鮮の弾道ミサイルの発射があり誠に遺憾なことで強く抗議をした。
改めてミサイル防衛体制をはじめ国民の命や暮らしを守るために十二分な備えができているのかしっかり問いかけ、国家安全保障戦略をはじめ外交・安全保障の議論をしっかり進めていかなければならないという強い危機感を感じている」と述べました。
岸防衛相「極めて高い頻度で発射」
岸防衛大臣は「昨今の弾道ミサイルなどのたび重なる発射はわが国を含む国際社会全体にとっての深刻な課題だ。国連安保理決議違反で強く非難する」と述べました。
また岸大臣は「北朝鮮は2週間に4回という極めて高い頻度で鉄道からの発射や変則的な軌道の可能性のある飛しょうといった新たな態様での発射を行っている。
発射の兆候把握を困難にするための秘匿性や即時性、奇襲的な攻撃能力の向上、発射形態の多様化など急速に関連技術や運用能力の向上を図ってきていることは明らかだ」と述べました。
そのうえで「一連の弾道ミサイル発射を含む北朝鮮の軍事動向はわが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域と国際社会の平和と安全を著しく損なうものだ」と述べ、防衛力の抜本的な強化に取り組む考えを示しました。
今回の発射を受けて政府は北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議しました。
松野官房長官「現時点で被害報告など確認されず」
松野官房長官は、臨時閣議のあとの記者会見で「先ほど北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたが、現時点で、関係機関からの被害報告などの情報は確認されていない。
政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設置している北朝鮮情勢に関する官邸対策室で関係省庁間で情報を集約するとともに、緊急参集チームを招集し、対応について協議を行った」と述べました。
そのうえで「これまでの弾道ミサイルなどのたび重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国と地域および国際社会の平和と安全を脅かすもので、強く非難する。
国民の生命・財産を守り抜くため、引き続き情報の収集・分析および、警戒監視に全力を挙げ、今後、追加して公表すべき情報を入手した場合には、速やかに発表する」と述べました。
林外相「誠に遺憾 情報の収集・分析に全力」
林外務大臣は午前9時すぎ、外務省で記者団に対し「詳細について分析中だがことしに入ってから5日、11日、14日に続いて北朝鮮が連続して発射していることは誠に遺憾だ。
外務省としても発射直後から米国および韓国と緊密な連携を確認してきており、引き続き情報の収集・分析に全力を挙げて日本の平和と安定の確保に万全を期していきたい」と述べました。
韓国軍“北朝鮮 首都郊外から日本海へ飛しょう体2発発射”
韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が17日午前8時50分ごろと54分ごろ、首都ピョンヤン郊外のスナン(順安)にある国際空港付近から、日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体を2発、発射したと発表しました。
飛行距離はおよそ380キロ、高度はおよそ42キロだったと説明していて、アメリカ軍とともに詳しく分析しています。
また、韓国政府は17日午前、緊急のNSC=国家安全保障会議を開いて対応を協議し、改めて遺憾の意を表明したうえで、朝鮮半島の安定を回復するためには、早期に対話を始めることが重要だと強調しました。
北朝鮮による飛しょう体の発射はことしに入ってから、すでに4回目で、3日前の今月14日には、北西部のピョンアン(平安)北道から日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体2発を発射し、その翌日、15日に「鉄道機動ミサイル連隊」が発射訓練を行ったと発表していました。
北朝鮮は、アメリカが12日に北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって、追加の経済制裁を科したと発表したことに強く反発していたほか、国営のウェブサイトでは17日、韓国軍が軍事境界線近くで訓練を行っているうえ、アメリカ軍が主導してグアムで行われている軍事演習にも参加したとして非難していました。
このため、北朝鮮としては短期間に発射を繰り返すことで、軍事力を強化する姿勢を鮮明にし、アメリカや韓国をけん制するねらいもあるとみられます。
ことしに入ってのミサイル発射は
ことしに入って北朝鮮がミサイルを発射したのは今回がすでに4回目です。
▽1回目は今月5日、北朝鮮北部のチャガン(慈江)道から日本海に向けて弾道ミサイル1発が発射されました。
北朝鮮は国営メディアを通じて極超音速ミサイルの発射実験を行い「700キロ先に設定された目標に誤差なく命中した」と発表しました。
▽2回目は6日後の11日で同じ北部のチャガン道から弾道ミサイル1発が日本海に向けて発射され、北朝鮮はキム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと極超音速ミサイルの発射実験を再び行ったと発表しました。
この中で「ミサイルから分離された弾頭が1000キロ先の水域に設定された目標に命中した」としたうえで、技術的な特性を確認するための「最終的な発射実験」だったと位置づけました。
さらに
▽3回目は3日後の14日で北西部のピョンアン(平安)北道から日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体2発が発射されました。
北朝鮮は「鉄道機動ミサイル連隊」が抜き打ちの発射訓練を行い「2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表し、立ち会った国防科学院の幹部らが全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題について議論したとしていました。
米軍 “発射したのは弾道ミサイル”
アメリカのインド太平洋軍は16日、声明を発表し、北朝鮮が発射したのは弾道ミサイルだったとの認識を示し「今回の発射はアメリカの国民や領土、それに同盟国への差し迫った脅威ではないと判断している」としました。
そして北朝鮮の違法な兵器開発が地域を不安定化させることを浮き彫りにするものだとして懸念を示したうえで「日本と韓国の防衛に対するアメリカの関与は揺るぎない」と強調しました。
米国務省“隣国や国際社会にとって脅威 対話に参加を”
アメリカ国務省の報道担当者はNHKの取材に対し「国連安全保障理事会の決議に違反しており北朝鮮の隣国や国際社会にとって脅威だ」と非難しました。
そのうえで「われわれは北朝鮮に対し対話に参加するよう求める」と述べ、非核化に向けた米朝対話の再開に応じるよう改めて求めました。
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