ロシア侵攻ならパイプライン開通を阻止 米政府、ウクライナ危機で警告

 ロシア侵攻ならパイプライン開通を阻止 米政府、ウクライナ危機で警告

2022年1月28日

BBC


ウクライナ情勢が緊迫する中、アメリカは27日までに、ロシアがウクライナを侵攻すれば、ロシアの天然ガスを西ヨーロッパに送る主要パイプラインを開通させないと警告した。


このパイプラインは、ロシアとドイツを結ぶ「ノルド・ストリーム2」。

ロシアに大きな利益をもたらすとみられている。


ドイツ・ベルリンにいる米当局者は27日、ロシアが攻撃に出れば、ノルド・ストリーム2を使ったガス供給プロジェクトは制裁対象になり得ると話した。


西側同盟国は、ロシアがウクライナを侵攻した場合は、経済制裁を発動すると表明している。

アメリカ側の直近の発信は、ノルド・ストリーム2をめぐって西側が態度を硬化させていることを示している。


一方、ロシアは攻撃計画はないと主張している。


しかし、ロシア軍はここ数週間、ウクライナ国境付近に計数万人規模の部隊を集結させている。

そのため緊張が高まっており、侵攻の懸念も強まっている。


「ドイツと協力して止める」

米国務省のネッド・プライス報道官は26日、「はっきり言っておく。

ロシアが何らかの形でウクライナに攻め込めば、ノルド・ストリーム2は前進しない」と米公共ラジオNPRで発言。


パイプラインをどう止めるかの「詳細には触れない」としつつ、「ドイツと協力して前進しないようにする」と報道官は述べた。


ガス供給プロジェクトを止める権限がアメリカにあるのかは、不明。


アメリカはノルド・ストリーム2の開通を全面阻止すると主張しているが、ドイツはガス供給プロジェクトについて、制裁対象とする可能性があるとだけ表明している。


ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は議会で、西側同盟国が「ノルド・ストリーム2を含む」対象について「強力な制裁を検討している」と説明。


ただ、ロシア政府と「話し合いを続ける」方が望ましいと述べた。


ベアボック氏のこの発言の前には、ドイツのエミリー・ハーバー駐米大使がツイッターで、ロシアによる「ウクライナの主権」の侵害があれば、「ノルド・ストリーム2を含む全てが検討対象になる」とコメントした。


ノルド・ストリーム2は全長1225キロ。

5年と110億ドル(1兆2700億円)をかけて建設された。

バルト海の海底を通り、ロシアのドイツへのガス輸出はこのプロジェクトによって倍増する見通し。


ドイツ規制当局は昨年11月、ノルド・ストリーム2がドイツ国内法に適合していないとして、承認手続きを停止。

そのため、まだ運用が始まっていない。


欧州企業はノルド・ストリーム2に多額の投資をしてきた。

ドイツのゲアハルト・シュレーダー元首相も開発に大きな役割を果たしてきた。

だが、プロジェクトに反対する団体も多い。


環境保護派は、二酸化炭素の排出を削減し、人工問題である気候変動に取り組むとしているドイツの姿勢と合致しないと批判。

同国内外の政治家らは、ロシアのエネルギーに対するヨーロッパの依存度が高まることに懸念を示している。


ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれまで、ノルド・ストリーム2を「危険な地政学的武器」と評している。


ウクライナ危機めぐる外交

アメリカのジョー・バイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は27日、電話で協議した。

競技終了後まもなく、ゼレンスキー氏は、「緊張緩和に向けた最近の外交努力について話し合った。

(中略)現在の軍事支援に対して、バイデン大統領に感謝を伝えた」と話した。


アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は26日、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を禁じるよう求めたロシアの要求を拒否。

同時に、「真剣な外交的道筋」を提案した。


ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの提案について検討していると、大統領報道官は話した。


提案の内容は明らかになっていない。

ブリンケン長官は、アメリカの「基本原則」を明確に示す書面をロシアに送ったと説明。

ウクライナが主権およびNATOなどの安全保障同盟に参加する権利をもつことなどを明記したという。


一方、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、ブリンケン長官からの公式文書について、NATOの拡大というロシアの「主たる懸念」に対応するものではないとした。

ただ同時に、二次的な問題については「真剣な対話の開始への希望をもたせる」とし、プーチン大統領が対応を決めると述べた。


ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの4カ国は26日、仏パリで高官級会合を開催。

2014年からウクライナ東部ドンバス地方で続く、ロシアの支援を受けた反政府勢力とウクライナ軍の紛争について、停戦を定めたミンスク合意の履行に対するコミットメントを再確認した。


仏大統領府が発表した声明によると、4カ国は「ほかの問題に関する相違は別として」停戦を支持していくことで一致した。

4カ国は2週間以内に独ベルリンで再び協議する予定。


米政府によると、バイデン大統領は来月2日、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談し、ウクライナ情勢をめぐって意見を交わすという。




コメント