朱鎔基・中国元首相ら習氏の3期目に反対…久しぶりに聞いた中国での「正論」 権力集中に懸念〝永久皇帝〟に疑問呈す
2022.3/27
夕刊フジ
朱鎔基元首相。この人の言葉は重い
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、中国の朱鎔基元首相ら引退した共産党幹部らが、習近平国家主席が今年後半の共産党大会で3期目入りを目指していることについて、反対する意向だという。
中国では建国の父の毛沢東が独裁を強めた結果、経済政策の失敗などの弊害が生じたため、鄧小平が最高指導者だった時代に集団指導体制が構築された。それを経験した党の長老の間で、習主席への権力集中への懸念が広まっていることが背景にある。
これは結構重い出来事だ。朱鎔基という人は、首相を務めた1998~2003年、国有企業改革を推進して市場経済化を加速した。01年には世界貿易機関(WTO)への加盟も果たしている。
首相になる前は中国人民銀行の行長も歴任した。中国の経済発展に大きな貢献をした。習主席は国有企業の活動を後押しする一方、民間企業には統制を強めている。この政策にも言いたいことがあったのだろう。
政治家引退後は長い間沈黙を保っていた。その間、娘の朱燕来氏が香港で親の七光で中国銀行の総裁補佐に就任したという噂が10年くらい前に流されたことはあったが…。
その朱鎔基元首相が、李克強首相でさえ2期で退任するのに自分だけは3期以上やってもいいと思っている習近平〝永久皇帝〟に対し、突如疑問を呈したわけだ。
93歳という年齢を考えると、この意見が広がるのは難しいかなと思うが、朱氏の発言なら影響があるかもしれないという期待もある。「権力を集中させるのはよくない」という「正論」を中国で久しぶりに聞いた感じがする。
当の習主席はこの期に及んでも「ゼロコロナ」政策を推進している。ゼロコロナは経済活動や市民生活を犠牲にしても新型コロナの市中感染を抑え込むというもの。
しかし、中国の国家衛生健康委員会によると、中国本土で18日に確認された新型コロナの新たな市中感染者は、無症状を含めて3870人だったという。2月中旬までは1日数十から200人台を推移していたのが、急拡大している。このうち約6割が吉林省で確認されている。
重症化率が低いとはいえ、オミクロン株のような感染が広がりやすいウイルスに対して、ゼロコロナなんて唱えるのは、平清盛が沈む太陽に対して扇子であおいで戻そうというのと同じこと。重力に逆らっているようなものだ。
さらに、「ゼロコロナを徹底できなかった自治体の長には責任を問う」とも言っている。1日数万人規模の感染を繰り返す米国や欧州の国々に対して、共産党独裁の正当性をアピールできると思っているからだろう。
腐敗の責任は問われても仕方ないが、コロナ患者が出たから責任を問うなんて言っている習近平〝永久皇帝〟、ちょっと踏み外しているように思える。この人の頭はすでに「プーチン化」しているのではないか。
■ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。
中国の人に「朱鎔基はどんな人?」と聞くと、「100年に1人の政治家」と言う。国民の多くから尊敬されている。「生きている間は改革を徹底的にやる。私に対してどんな反発があってもかまわない。その代わり、私が死んで墓に入ったら、静かに眠らせてくれ」と正論を通す人だった。
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