ウクライナ・マリウポリの市民約20人、包囲中の製鉄所から脱出

 ウクライナ・マリウポリの市民約20人、包囲中の製鉄所から脱出

5/1(日)

BBC

ロシア軍が制圧したウクライナ南東部の港湾都市マリウポリで4月30日、ウクライナの部隊と民間人が最後までたてこもる製鉄所から、民間人約20人のグループが脱出した。

ロシア国営メディアが報道し、現場の部隊指揮官が確認した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4月21日、アゾフスタリ製鉄所から「ハエ1匹逃げられないよう」封鎖するよう命じていた。

他方、ウクライナ東部ではロシア軍の攻撃が激化している。


ロシア国営タス通信などは、アゾフスタリ製鉄所から民間人25人が脱出したと伝えた。14歳未満の子供6人も含まれているとした。行き先は伝えていない。


これについて、製鉄所内にたてこもるアゾフ大隊のスヴィアトスラウ・パラマル副司令官は、計20人の女性と子供が製鉄所から脱出したと確認。「適切な場所へ移動させた。ウクライナが支配する領土の、ザポリッジャへ避難できるよう期待している」と述べた。


プーチン大統領が製鉄所の封鎖を命じて以来、中にたてこもっていた人たちが外に出るのは初めて。まだ中に残る約1000人の民間人の解放について、ロシアとウクライナの協議が続いている。


マリウポリ市のヴァディム・ボイチェンコ市長はBBCに、製鉄所内の人たちは「生きるか死ぬかの境目にいる」と述べ、「みんな待っている。救出を祈っている(中略)みんなの命を助けるのに、残された時間があと何日なのか何時間なのか分かりにくい」と話した。


  ロシア軍がマリウポリを完全制圧すれば、ウクライナ南岸全体の掌握が容易になる。そうすれば、親ロシア分離独立派が実効支配するウクライナ東部のドネツクやルハンスクと、ロシアが2014年に併合したクリミアが陸続きになる。加えて、ウクライナの西の隣国モルドヴァでロシア系住民が分離を宣言しているトランスニストリア地域にも、接近しやすくなる。


南西部の港湾都市オデーサでは30日、大きな爆発音が3回響いた。現地当局によると、空港の滑走路が破壊され、使用不能になったという。


トランスニストリア地域では25日、謎の爆発が相次いだ。ウクライナでの紛争が拡大する恐れが出ている。この地域を支配している親ロシアの分離派当局は、ウクライナの「侵入者」の仕業だと発表した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの特殊部隊によるものだと非難している。


モルドヴァのトランスニストリア地域をめぐっては、ロシア中央軍管区のルスタム・ミネカエフ副司令官が22日、ロシア軍はウクライナ東部ドンバスだけでなく南部も制圧するつもりだと発言。ミネカエフ少将は、「ウクライナ南部を支配すれば、そちらからもトランスニストリア地域へ到達しやすくなる。トランスニストリア地域でも、ロシア語話者の住民が抑圧されている事実がある」と述べていた。


■東部の攻撃激化


この間、ロシア軍はウクライナ東部での攻勢を強めている。


ウクライナ国防省のオレクサンドル・モトゥジャニク報道官は、ロシア軍が「ウクライナ東部での攻勢の激しさを、全方位で徐々に増している」と述べ、「侵略者がこれまで以上に大規模な軍事行動の実施に向けて、準備している様子がうかがえる」と話した。


東部でのロシアの作戦行動について、英国防省は30日の戦況分析で、次のように指摘している。


  

    ・ロシアはこれまでの侵略作戦の実行を妨げた問題を解消しようと、戦闘力を地理的に集中させ、補給線を短縮し、指揮系統を簡略化している。

    ・ロシアはいまだに相当の課題に直面している。ウクライナ北東部で失敗した進軍作戦から、装備を失いバラバラになった部隊を集めて編成しなおし、再配備せざるを得なくなった。こうした部隊の多くでおそらく士気が低下している。

    ・ロシア軍の戦術調整には今なお問題がある。部隊ごとの技術不足と一貫性のない航空支援のため、ロシア軍は局地的な改善はあるものの、その大規模な戦闘力を十分に活用できずにいる。

  

同様に米国防総省関係者は29日、ウクライナ東部ドンバス地方を制圧しようとするロシア軍の作戦は予定より遅れていると記者団に話した。


ロシア軍は少なくとも92の大隊戦術群をウクライナの東部と南部に展開し、さらに追加の部隊が国境のロシア側で待機しているものの、その戦力はまだ開戦当初の苦戦から十分に回復していない可能性があると、国防総省関係者は述べた。


ウクライナ軍の徹底抗戦に加え、キーウ制圧に失敗した経験から、ロシア軍が補給線より前に進むことをためらっており、それが作戦遂行の遅れにつながっていると、国防総省筋は分析。「少なくとも予定より数日は進捗(しんちょく)が遅れ」ており、「(ロシア軍は)大規模な長期戦に備えた状況を整備しているようだ」との見方を示した。


■30日のその他の情勢


この日は両国間で捕虜交換が行われ、ウクライナ人14人(妊娠5カ月の兵士1人含む)と、人数不明のロシア人捕虜がそれぞれ帰還した。


ウクライナ農政次官は、ロシアが占領地域から数十万トンもの穀物を盗んだとして、「窃盗そのものだ」と非難した。ロシア政府はこれを否定している。


ロシアによる戦争犯罪があったとウクライナ側が非難している首都キーウ近郊ブチャでは、縛り上げられ目隠しをされ、拷問された様子の男性3人の遺体を発見したと、警察が発表した。


ロシア外務省の核軍縮交渉を担当するウラジーミル・エルマコフ軍事戦略部長は、核戦争は容認できないという理想をロシア政府は堅持しているものの、西側が緊張を悪化させていると非難した。


ウクライナ軍関係者によると、東部ドンバス地方でロシア軍に攻撃が続くポパスナの町で、住民救出に向かったバス3台のうち2台が行方不明という。


ロシア国防省は、30日にウクライナで17カ所の軍事目標を攻撃したと発表。ウクライナ兵200人以上を死亡させたほか、装甲車23台など装備を破壊したとしている。


武力攻撃で相手に与えた損害について、ロシアとウクライナはそれぞれ様々な発表をしている。BBCは内容を検証できていない。


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