岸田首相会見【詳細】安倍元首相の国葬 4回目接種などについて
2022年7月14日
配信 NHK
岸田総理大臣は、午後6時から総理大臣官邸で記者会見を行いました。
安倍元総理大臣の国葬を行う方針や、4回目のワクチン接種の対象範囲を拡大することなどについて説明しました。
“節ガス”「お願いする状況にはない」
岸田総理大臣は、いわゆる「節ガス」について「現在、都市ガスの需給はひっ迫しておらず国民に『節ガス』などをお願いする状況にはないが、万が一の状況に備えあらゆる対応を検討したい」と述べました。
サハリン2 「日本企業の権益を守る」
ロシアのプーチン大統領が「サハリン2」の事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名したことについて「ロシアの対応は予断を許さない。日本としては、世界の自由と平和秩序を守るためにロシアの脅しには屈せず、きぜんと対応するという基本方針は譲れない」と述べました。
そのうえで「『サハリン2』は日本の電力やガスの安定供給の観点からも重要なプロジェクトだ。大統領令によってLNG=液化天然ガスの輸入が直ちに止まるわけではないが、日本の企業の権益を守りLNGの安定供給が確保できるよう、官民で一体で対応したい」と述べました。
防衛費の増額「数字ありきで議論しない」
防衛費の増額について「自民党から政府に新たな『国家安全保障戦略』などの策定に向けた提言がされており、その中で、弾薬の確保などによる継戦能力の維持や、AI=人工知能、無人機、量子技術などの先端技術の早期実用化、防衛生産・技術基盤や人的基盤の強化、いわゆる反撃能力の保有が提言されており、こうしたものも参考にしながら内容と予算と財源の3点をセットで議論を進めていきたい」と述べました。
そのうえで「政府として数字ありきで議論はしない。NATO=北大西洋条約機構の加盟国が、防衛費の目標としているGDP=国内総生産の2%という数字を念頭に置きながら、わが国として、5年かけて防衛力を抜本的に強化していく。国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか具体的に、現実的に積み上げていかなければならない。現実的、具体的な議論を行わなければならないことを念頭に、年末に向けてしっかり進めていきたい」と述べました。
安倍元首相の国葬 全額を国費で
岸田総理大臣は「いわゆる国葬の費用負担については、国の儀式として実施するものであり、その全額が国費による支弁となるものと考えている」と述べ、安倍元総理大臣の国葬は国費から支出する考えを示しました。
また、記者団が「国費を支出するにあたって国会審議は必要か」と質問したのに対し「国の儀式を内閣が行うことは、内閣府設置法に内閣府の所掌事務として明記されている。国の儀式として行う『国葬儀』については、閣議決定を根拠として行政が国を代表して行いうるもので、内閣法制局ともしっかり調整したうえで政府として判断している」と述べました。
4回目接種「障害者施設の職員などにも拡大が大事」
4回目のワクチン接種の対象範囲を拡大することについて「障害者施設の職員の方々などに対しても拡大することが大事だ。対象は現場の状況も確認しながら明らかにしたいが弱い立場の方々を支援する人たちをしっかり支えるために必要な接種を考えていかなければならない」と述べました。
原発再稼働「安全性が大前提」
原発について「基本的な考え方は、従来どおり安全性を大前提にしていくことで変わらない。地元の意見を聞きながら再稼働を進め、最大限の活用を図っていく。再稼働が円滑に進むよう、原子力規制委員会が審査効率化の取り組みを着実に実施していくと承知しており、国も前面に立って、立地自治体など、関係者の理解と協力が得られるよう、粘り強く取り組んでいく」と述べました。
政府によりますと、岸田総理大臣が冬の電力ひっ迫に備えて稼働させるとした9基の原発は、
▼福井県にある
◇高浜原発3号機と4号機、
◇大飯原発3号機と4号機、
◇美浜原発3号機、
▼愛媛県の
◇伊方原発3号機、
▼佐賀県の
◇玄海原発3号機、
▼鹿児島県の
◇川内原発1号機と2号機だということです。
新型コロナ 水際対策「強化は具体的には考えていない」
新型コロナの水際対策について「国内外のニーズや検疫体制などを勘案し、内外の感染状況や主要国の水際対策の状況を踏まえながら、適切に判断していく。いま対策を強化することは具体的には考えていないが、今後の状況を注視していきたい」と述べました。
成し遂げたいこと「日本の経済を再生し、持続可能なものに」
記者団から総理大臣の在任中に最も成し遂げたいことを問われたのに対し「1つは、新型コロナや物価高などを乗り越えて日本の経済を再生し、持続可能なものにすることだ。国外では、国際社会で平和の秩序が揺るがされている状況なので、日本が国際社会の中で平和を維持し、しっかり対応できるための国際的な秩序作りに汗をかきたい」と述べました。
銃撃事件「率直に言って警備態勢に問題があった」
安倍元総理大臣が演説中に銃で撃たれて死亡した事件について「大変重く受け止めており、率直に言って警備態勢に問題があったと考えている。いま国家公安委員会や警察庁で問題点を早急に洗い出し、具体的な対策を検討していると報告を受けているが、世界各国の要人警護の在り方などとも照らしながら、全面的に点検し、正すべきことは早急に正してもらいたい」と述べました。
内閣改造や党役員人事「まだ何も決めていない」
内閣改造や党役員人事について「選挙が終わったばかりで、まずは臨時国会などの政治日程を考えなければならない段階であり、人事についてはまだ何も決めていないし、今、具体的に話をする段階にはない」と述べました。
そのうえで「今、国の内外に有事と言っていいほど、歴史を画するような課題が山積しており、こうした状況の中では何よりも与党の結束が大事だ。『適材適所』ぐらいは頭にあるが、それ以上具体的なものは今はまだ決まっていない」と述べました。
憲法改正「より議論が活発化されることを期待」
憲法改正について「国会での議論を深め、内容で3分の2の賛同を得る取り組みを進めていかなければならない。総理大臣の立場で内容や進め方について申し上げることは控えなければならないが、先の通常国会でも、憲法をめぐる国会での議論が活発化してきていると感じており、秋に臨時国会が開催されれば、より議論が活発化されることを期待する」と述べました。
「必要な財政出動はちゅうちょしてはならない」
今後の物価高騰対策と財政政策について「目の前の物価高騰などに対する必要な財政出動はちゅうちょしてはならない。このことと中長期的に国の信頼の礎である財政を安定させていくことは決して矛盾しない。目の前の課題にしっかり対応しながら、中長期的な財政についても国際市場やマーケットがわが国の信頼に疑念を抱くことがないように財政経済運営をしていきたい」と述べました。
外交・安全保障 先頭に立って首脳外交を進める
外交・安全保障をめぐって、来月以降、NPT=核拡散防止条約の再検討会議や、TICAD=アフリカ開発会議をはじめ、外交日程が続くとして、みずから先頭に立って首脳外交を進める決意を示しました。
さらに、国家安全保障戦略などの策定に向けた議論を加速させ、5年以内の防衛力の抜本的強化の具体化を行うとしたほか、来年広島で開催されるG7サミット=主要7か国首脳会議の事務局をあす設置し着実に準備を進める考えを示しました。
物価高騰 ポイント付与する新たな支援制度
物価高騰対策では15日に「物価・賃金・生活総合対策本部」を開いて対応策を議論するとしたうえで、地方創生臨時交付金の増額や、一定の節電を行った家庭などに対し、幅広く使えるポイントを付与する新たな支援制度を整備する考えを重ねて示しました。
そして、5兆5000億円の予備費を機動的に活用しながら、切れ目なく対策を行っていくと強調しました。
最大9基の原発稼働を進めるよう指示
エネルギー対策をめぐり岸田総理大臣は、冬には再度、電力需給がひっ迫することが懸念されるとして、萩生田経済産業大臣に対し、最大9基の原発の稼働を進め、日本全体の電力消費量のおよそ1割に相当する電力を確保するとともに、火力発電の供給能力を追加的に10基分確保することを目指すよう指示したと明らかにしました。
そして「これらが実現されれば、過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できる。政府の責任であらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組む」と述べました。
夏の電力 安定供給の見通し
エネルギー対策をめぐり、岸田総理大臣は、この夏は電力の安定供給を確保できる見通しが立ったとして、無理な節電をせずクーラーを使いながら乗り越えてほしいと呼びかけました。
主要な駅や空港 100か所以上に「臨時の無料検査拠点」を整備
岸田総理大臣は、夏休みで人と人との接触機会が増えることが予想されるとして、全国のおよそ1万3000か所で無料の検査を行うほか、主要な駅や空港などに100か所以上の臨時の無料検査拠点を整備する考えを示しました。
また国民に対しては、手指消毒や室内で会話するときのマスク着用、冷房でこもりがちになる室内・飲食店内での十分な換気といった基本的な感染対策を徹底するよう協力を呼びかけました。
4回目接種 医療従事者と高齢者施設のスタッフなどに拡大
岸田総理大臣は、現在、60歳以上の人などに行っている4回目のワクチン接種の対象範囲を、医療従事者と高齢者施設のスタッフなどにも拡大し来週以降、接種を始めることを表明しました。
具体的には、現在、60歳以上の人や18歳以上で基礎疾患がある人に行っている4回目のワクチン接種について、厚生労働省の審議会に諮ったうえで、すべての医療従事者と高齢者施設のスタッフなどおよそ800万人にも対象範囲を拡大し、来週以降、接種を進めることを表明しました。
また、3回目の接種を終えていない若い世代に対し、感染拡大を踏まえて接種を受けるよう呼びかけました。
「新たな行動制限は現時点では考えていない」
岸田総理大臣は、新型コロナの感染状況について、感染が全国的に拡大し、若い世代を中心にすべての年代で感染者が増えているものの、重症者数や死亡者数は低い水準にあり、病床使用率も総じて低い水準にあると説明しました。
そして、新たな行動制限を行うことは現時点では考えていないとする一方、社会経済活動と感染拡大防止の両立を維持するため、世代ごとにメリハリの効いた感染対策をさらに徹底する考えを示しました。
安倍元首相 「国葬」の方針を表明
演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣について、岸田総理大臣は、歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残したなどとして、ことしの秋に国葬を行う方針を表明しました。
岸田総理大臣は会見の冒頭、奈良市で演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣に哀悼の意を示しました。
そのうえで、安倍氏について「憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって総理大臣の重責を担い、東日本大震災からの復興や日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開などさまざまな分野で実績を残すなど、その功績はすばらしいものがある」と述べました。
また「外国の首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、民主主義の根幹である選挙が行われている中、突然の蛮行で逝去されたことに対して、国の内外から幅広く哀悼や追悼の意が寄せられている」と述べました。
そして「こうした点を勘案し、この秋に『国葬儀』の形式で、安倍元総理大臣の葬儀を行うこととする」と表明しました。
さらに岸田総理大臣は「安倍元総理大臣を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく。合わせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ未来を切りひらいていくという気持ちを世界に示していきたい」と述べました。
戦後、総理大臣経験者の「国葬」は、昭和42年に亡くなった吉田茂・元総理大臣以来、2人目となります。
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