プーチン大統領 北方領土周辺を「あらゆる手段で確実に守る」

 プーチン大統領 北方領土周辺を「あらゆる手段で確実に守る」

2022年8月1日

配信 NHK


ロシアのプーチン大統領は演説を行い、北方領土を含む島々の周辺海域を、戦略的に重要だとしたうえで「あらゆる手段で確実に守る」と述べ、強硬な姿勢を鮮明にしました。


ロシアのプーチン大統領は31日、サンクトペテルブルクで開かれた海軍の記念式典にあわせて海の安全保障の指針となる「海洋ドクトリン」の改訂版を承認する大統領令に署名しました。


署名後の演説でプーチン大統領は「国益上の領域を明確にした。それは黒海であり、オホーツク海やクリル諸島周辺の海域だ。これらを、あらゆる手段で確実に守る」と述べ、ウクライナ南部の黒海のほか、北方領土を含む島々の周辺海域はロシアの国益上、重要だと強調し、強硬な姿勢を鮮明にしました。


新たな「海洋ドクトリン」では世界の海洋をロシアの国益上「死活的に重要」「重要」「それ以外」の3段階に分けていて、北方領土の周辺海域は「重要」と位置づけています。


また「安全保障上の挑戦と脅威」を列挙する中で「島しょ部の領土要求」をその1つに含めています。


一方、アメリカやNATO=北大西洋条約機構を名指ししながら、「世界の海洋の支配をねらうアメリカの戦略的方針」や「ロシア国境への軍事インフラの接近」も安全保障上の脅威と位置づけています。


そのうえで「国益を守る手段として、『重要』な領域では、外交や経済的な手段を優先するが、状況に応じ軍事力を適用する可能性がある」として、国益のためには軍事力の行使も辞さない構えを示しています。


木原官房副長官「情報収集などを含め適切に対応」

木原官房副長官は、1日の記者会見で「北方領土を含む、わが国周辺におけるロシア軍の動向については、日頃から注視している。

情報収集を行うとともに必要に応じて、ロシア側に対し、わが国の立場を申し入れている。政府として、引き続き、関連の情報収集などを含め、適切に対応する」と述べました。


プーチン大統領 “海上発射型の極超音速ミサイル 近く配備”

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、東部ドネツク州で攻勢を強め、ウクライナ政府は現地の住民を避難させる考えを示す一方で、南部で反転攻勢に出ています。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は海軍の記念式典で演説し、海上発射型の極超音速ミサイル「ツィルコン」を近く配備すると明らかにし、アメリカなどをけん制したものとみられます。

ロシア軍は、全域の掌握をねらうウクライナ東部ドネツク州で攻勢を強めていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、30日の分析で、中心都市ドネツク市やその北にあるバフムトの周辺で戦闘が今後激化するという見通しを示しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、ドネツク州に残る住民に避難を命じる考えを示し、ベレシチュク副首相も、冬を迎える前に避難を終える必要があると強調しました。

一方、ウクライナ軍は、南部で反転攻勢に出ていて、29日にはロシア軍兵士100人以上を殺害し、戦車7両を破壊したと主張するなど、反撃をさらに強める構えを示しています。

こうした中、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは、海軍の創設を記念する式典が開かれ、海上発射型の巡航ミサイル「カリブル」を搭載した艦艇や潜水艦など合わせて40隻余りの軍艦のほか、42機の航空機、それにおよそ3500人の海兵隊員が参加しました。

式典では、プーチン大統領が演説し「重要なのは海軍力だ。海軍力は、国の主権と自由を侵害するあらゆるものに迅速に対応し、ロシアの国境や、世界の海洋のあらゆる地域で戦略的な任務を確実に遂行することができる」と述べたうえで、海上発射型の極超音速ミサイル「ツィルコン」を数か月以内にフリゲート艦に搭載する方針を明らかにしました。

また、プーチン大統領は「『ツィルコン』を搭載した艦艇の任務領域は、ロシアの安全保障上の利益に基づき決定される」と述べ、ウクライナとともにアメリカなどをけん制したものとみられます。

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