小さな勇気と大きな帰り道――子猫コロの旅
ある小さな村の一軒家。
子猫のコロは、大好きなおばあさんと穏やかな日々を過ごしていました。
ところがある日、畑でおばあさんが倒れてしまいます。
コロは必死に助けを呼び、おばあさんは無事救急車で運ばれました。
しかし、そのままおばあさんは入院することになり、コロは娘さんの家で暮らすことに。
けれど、どんなに優しくしてもらっても、コロの心はおばあさんの家にありました。
ある夜、スマホから聞こえたおばあさんの声――「もうすぐ帰るから、待っててね」。
その言葉に胸を震わせたコロは、小さな体で大きな決意をします。
「ぼくが、おばあさんのところへ帰るんだ」
こうして始まった、子猫コロの長い旅。
夜の街を抜け、雨の中を歩き、見知らぬ人の優しさに支えられながら、
コロは一歩ずつ、おばあさんの家を目指します。
森ではタヌキに出会い、空からはカラスが助けてくれました。
疲れ切った体で辿り着いた無人販売所では、
昔おばあさんの家に来ていた優しいおばさんに魚をもらいます。
その温かさに励まされ、夕暮れの道を再び歩き出すコロ。
そして満月の夜――。
灯りのともったおばあさんの家が見えたとき、コロの瞳は輝きました。
窓辺に立つおばあさんの姿を見つけたコロは、全力で駆け出します。
「コロ…! コロなのかい!」
涙で笑うおばあさんの胸に飛び込み、コロはゴロゴロと喉を鳴らしました。
それから再び始まった、ふたりの静かな日常。
朝はおばあさんの布団の横で眠り、昼は畑を歩き、夜は膝の上で甘える。
長い旅を経て戻った日々は、何よりも優しく、何よりもあたたかい時間でした。
コロは心の中でそっと思います。
――もう、ひとりじゃない。
ここが、ぼくの帰る場所だ。
【あとがき】
子猫コロの物語は、「小さな命の勇気」と「絆の力」を描いたお話です。
言葉は通じなくても、心はつながる。
そして、どんなに遠く離れても“帰る場所”があるということ。
そんな想いを、コロは小さな足で私たちに教えてくれます。
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