ゼレンスキー演説「真珠湾攻撃」言及でウクライナの支持やめる人の勘違い

 ゼレンスキー演説「真珠湾攻撃」言及でウクライナの支持やめる人の勘違い

3/19(土) 

ニューズウィーク日本版


<9.11と並べられて不愉快だと言う人たちは、真珠湾攻撃は「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」だというのだが>

1941年12月7日の真珠湾攻撃で沈む戦艦アリゾナ。これと9.11とは別物なのか Navy/U.S. Naval History and Heritage Command/Reuters


ウクライナのゼレンスキー大統領が、3月16日に米連邦議会のオンライン演説で「9.11」と「真珠湾攻撃」を取り上げたことで、特に日本の保守派から猛烈な反発が沸き起こっている。そのほとんどが、「9.11」はワールドトレードセンター等を標的とした民間人へのテロだが、真珠湾攻撃は軍事施設を標的とした攻撃であり、同列に論じられるのは不愉快である、というもので、これを以て「ゼレンスキーやウクライナへ同情するのをやめた」という日本の保守派ユーザーからの嫌悪感が沸き起こっている。【古谷経衡(作家)】


「9.11」の時、米メディアは盛んに真珠湾攻撃を引き合いに出し、「米本土が攻撃されたのは真珠湾以来初めて(二度目)」と報道した。アメリカにとって、実際がどうであれ「9.11」と「真珠湾」に対する認識はこうなっている。「真珠湾は軍施設を標的としたものだったから9.11と同列にするべきではない」というのは、はっきりいって世界的に見て極めてマイノリティな見解である。少なくともアメリカ側では「9.11」と「真珠湾攻撃」は同種類の本土への奇襲攻撃として扱われるのが普通である。こういった認識がアメリカにはあり、しかもそれが一般的であるというのは事実なのである。


一方日本の保守派にとって、いや日本人にとって真珠湾攻撃は大変センシティブな問題である。なぜなら真珠湾攻撃とアメリカによる二発の原爆投下は直線的につながっているからである。アメリカ側の史観に立てば、原爆投下は広義の意味で真珠湾攻撃の報復であり、真珠湾の「卑劣なだまし討ち」が原爆投下を正当化する感情的根拠になっているからである。


真珠湾攻撃は軍事目標(米太平洋艦隊・基地施設、飛行場等)への攻撃なのに、原爆は純然たる市街地を狙って無辜の民間人を25万人以上焼き殺している。よって日本人にとっては、真珠湾攻撃は大変申し訳ないけれども、それと原爆投下や東京大空襲は別の問題である、と言いたくなる心情がある。


真珠湾攻撃は日米共に多角的に検証されている。では真珠湾攻撃は純粋に軍事施設のみを狙った攻撃だったのかというと、本当にそうなのである。民間施設やオアフ島の市街地は、日本軍の攻撃目標ではなかった。しかしこれは日本軍の人道的配慮というよりも、民間施設を爆撃しても軍事的な意味がなかったからである。攻撃の目的は真珠湾に停泊する米太平洋艦隊の撃滅と航空戦力の無力化であって、米民間人を爆撃しても軍事的価値が無かったからに過ぎない。


真珠湾でも民間人が犠牲になった

とは言え、真珠湾攻撃によって米民間人では68人が死んだ。戦後日本側が刊行した戦史叢書第10巻「ハワイ作戦」によると、同攻撃による米民間人死者は68名、負傷35名となっている。この中には米看護師も含まれている。まずこの数字が正しいであろう。単純に軍事目標を狙ったとしても、精密爆撃が確立した現代戦ですら民間人が巻き添えになるのだから、81年前の当時は言うに及ばずである。この死傷者には米側の誤射や対空砲火の破片落下で死んだ民間人も含まれているが、日本軍が真珠湾を攻撃しなければ米軍は対空砲火をする必要がなく誤射も発生しないので、この付属事実を以て真珠湾攻撃を正当化する理屈にはならない。


としても、真珠湾攻撃の報復として広島・長崎の原爆投下を「仕方がない」と許容する日本人も現在ではごく少数である。数の問題ではない、というが数の問題だ。真珠湾68人と、二発の原爆で焼き殺された非戦闘員は少なく見積もっても20万人である。東京大空襲および各都市への空襲、沖縄戦等を合わせるとあの戦争で日本の民間人は60万人は死んでいる。68対600,000ではあまりにも非戦闘員への殺戮の度合いが違う、というのは日本側の心情としては確かにそうなのだが、それが「日本軍は紳士的な攻撃をやった」というところまで飛躍するとこれまた歴史修正史観である。


日本の保守派は、真珠湾攻撃を「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」にしたいという心情が働き、そもそも真珠湾攻撃を「アメリカが事前に知りながら、対枢軸参戦の切っ掛けのために放置していた」とか、「それがためにオアフ島から米空母を逃がしておいた」等という陰謀史観に結び付けるきらいがある。これらは歴史学者の秦郁彦氏の『陰謀史観』(新潮社)によってすべて完全に否定されている。確かにアメリカは日本の攻撃を警戒していたが、その主目的をフィリピン方面だと考えハワイの防備を軽視していた。また真珠湾に米空母(エンタープライズ)が居なかったのは、意図的に逃がしたからではなく、エンタープライズは真珠湾攻撃の1週間近く前にウェーク島への戦闘機輸送に就いていたから真珠湾に停泊していなかっただけで偶然である。そもそも航空母艦の重要性が強烈に認識されたのは真珠湾攻撃以降なので、原因と結果が逆転している。尤も、仮にエンタープライズが真珠湾攻撃で撃沈されていても、アメリカの造船能力をもってすれば日本敗北の結論は変わらなかったであろう。


常にある攻撃を正当化したい心理

真珠湾攻撃を「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」にしたいという心情は、拡大すると「あの戦争は正しかったのだ」という史観に結びつきかねない。しかし、結果的に宣戦布告が遅れたがゆえに「卑劣」とされた奇襲攻撃であっても、仮に宣戦布告直後になされた奇襲攻撃であっても、戦争に「紳士的な攻撃」などというものは無い。まして日本軍だけが「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」を徹底したという事はあり得ない。


その証拠に日本軍は、日中戦争では中国各地を爆撃し、とりわけ蒋介石が南京陥落後、重慶に遷都するや否や、執拗に重慶を爆撃して多数の非戦闘員を焼き殺している。戦略爆撃の先駆者は寧ろ日本軍であった。南方作戦が進展すると、日本軍は連合軍の退避地でもあった北部オーストラリアを1943年まで計97回に亘って執拗に空襲した。中でも最大規模であった1942年2月のダーウィン空襲では、オーストラリアの民間人を含む243名を焼き殺している。2018年11月16日、安倍晋三首相(当時)は、ダーウィンを訪問し慰霊碑に献花している。「軍施設のみを標的とした紳士的攻撃」など、古今東西、如何なる戦争に於いてもありえないのである。


よってゼレンスキー大統領が米議会で「9.11」と「真珠湾攻撃」を同列に扱うのは、日本人の心情としては神経質になる部分はあるとしても、「一方的に攻撃された側」の心情としてはやはり同列に扱われても抗弁しようがないのではないか。


真珠湾攻撃全体で死んだ米兵は約2,300名(正確には2,334名)である。そもそも軍人なら奇襲して殺してもよいのか、という視点が真珠湾攻撃正当化の理屈には決定的に欠落している。もし、中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃により、小松基地や朝霞の駐屯地が攻撃され、自衛隊員(自衛隊員=軍人か否かの議論はさておき)が2,300名焼き殺され、付随して68名の民間人が死んだとする。それを以て保守派は中国や北朝鮮の先制奇襲攻撃を「軍事目標に的を絞った紳士的な攻撃」と見做すのだろうか。保守派に限らず、日本人全体が烈火のごとく怒り狂うだろう。それでも全然怒らない、という者だけがゼレンスキー大統領に石を投げたらよい。


日本のコメント

立場の違いによってものの見方が変わるというのは当然だと思う。

ただ、今現在ウクライナを支援している国に対してもう少しものの言いよう、配慮があっても良かったのでは?ということを皆さん言いたいのでは?

どんなやり方をしようが戦争や攻撃を正当化することは出来ないことくらい皆頭ではわかっている。

攻撃に紳士的も淑女的もないし、軍事施設だけを狙ったからと言ってそれが紳士的とも思わない。

しかし、人間は感情的な生き物だから支援している最中にその対象国から否定的なことを言われれば否が応にも感情的になってしまうものだ。

ゼレンスキーさんにもう少し相手に対する配慮の気持ちがあればもう少し違った演説の仕方もあったのでは?と思ってしまう。

ゼレンスキーさんの少しの配慮の無さが今のロシアとの戦闘にまで発展した要因の一つのようにも思えるな。


真珠湾攻撃が「紳士的であった」とは決して思いませんが、記事にあるように、民間人に対する攻撃は厳禁されており、巻き添えになった民間人死亡者数は68人でした。

「真珠湾攻撃と、ロシアのウクライナ侵攻を同一視する」ということは、「民間人を狙ったものではない。民間人の犠牲は偶発的」というロシアの主張が正しい、と認めることになります。これが最大の問題点ではないでしょうか。


うーん、ゼレンスキー大統領は普通に日本で原爆の話するんじゃないんですかね。

真珠湾の話を、大統領はあくまでも被害というところに焦点を当てて語っていた気がします。

つまり、それを行った日本を責める意図は別にないのでしょう。

そして、もし仮に日本で原爆の話をしたとしても、それは被害の話であって、

行った側であるアメリカについて評価を下すことはないのだろうと思います。

誰が行ったかではなくどのような被害を受けたか、について日米双方で語ることについて

大統領はおそらく別に矛盾を感じないのでは、という気がします。

もしそうだとすれば、特にアメリカで真珠湾の話をしたことに対する謝罪はないでしょうね。

個人的にはそれで別にいいと思うし、些少ながら寄付もウクライナにしましたがそのことを後悔することもないだろうな、と思います。


話がどんどんずれて行くね。

ゼレンスキー大統領は、米国民の共感を得ようとして、

「ある日突然平穏な暮らしを失うこと」の例として『真珠湾攻撃』を持ち出して来ている。それ以外の意味はないと考えるべきだろう。

もちろん、日本の国会で演説できないかと打診しておきながら、世界中に配信されることがわかっているのに米国民向けだからと『真珠湾攻撃』を持ち出してくることが得策か?

と問われるなら、私とて若干の疑問は感じる。

(現に、それを問題視するコメントがかなりの数、見受けられる。)しかし、ここはそれをなじる場面でもないとも思う。

問題なのは過去のことではない。

今、起きていることをどうするかということなのだ。

歴史認識の違いはどこの地域にだって存在するだろう。だからと言って今、そのことに拘っていて良いのだろうか?

やや別の観点だが、私は、欧米等の勢力拡大と経済制裁により自国の将来を危惧した国家が、実質的に自国を守るという理由で、他国に先制攻撃を仕掛けたという点で、真珠湾攻撃もロシアのウクライナ侵攻も似ていると思う。

日本はやむにやまれぬ状況に追い込まれたからという理由が認められるのなら、ロシアにもその理由を認めることになるし、今後、他国にもその理由なら許すと認めることになりかねない。


今は真珠湾攻撃の個別事情や特殊性を挙げて抗議するときではなく、

日本人はウクライナの惨状に対して深く憂慮し自らも支援する意思があることを世界に示すことに集中すべきである。

真珠湾攻撃の話に焦点を当てるようでは、状況をわかっていないとバカにされるだけだ。

真珠湾のことを言いたい日本人の気持ちはわかる。

だが、それは別の機会に着実に浸透させていくべきことだと思う。


真珠湾攻撃に触れられると神経質なほど、過剰な防衛本能が働く人が多くみられる。

しかし、我が国は当時も今も、あの戦争の事実関係や経過、他国侵略の実態等についてすべての情報をオープンにしているものでもない。

残念ながら、当時、国民は事実を知らされす軍部や国粋主義者等による嘘の情報に操作され他国を侵略したことは歴史的事実であり、率直に認めなければならない。

殴ったほうは早く忘れたがるが、殴られた方は決して忘れようとはしない。

まして、侵略した方と侵略された方の立場の違いはなおさらである。

それを理解したうえで、ウクライナ大統領の発言を冷静に評価、受け止めることが大事ではないのか。

真珠湾攻撃について触れられたから云々というならば、そもそも真珠湾攻撃とは何であったのか、太平洋戦争とは何であったのかについて、そこから始まって欲しい。


真珠湾を出してきて、仲良くしている日米の関係に少し冷たい風を入れたのは確かだし、そんなこと関係ないと思っている。

日本で何を語るのか。

よく聞いて一人一人がその意味を考え、これまで通りウクライナに対して強く熱く支援を表明するのか、それとも微かに支援のトーンを下げるのか、1人1人が自分で判断すれば良い。

もちろん、避難民に対しては、安全と生活については必要な分、他の難民と同等に保証するのは当然だと思う。


民間人を標的にしているいないの大きな違いはあるけども、過去の戦争行為という意味では広義的に見れば「人類が避けるべき行い」であり、被害者も加害者もいる。


そういう広い視点で見れば、ゼレンスキーが真珠湾攻撃を軽視した発言とは思わないし、日本が紳士的な攻撃だったと威張ることも不自然だ、当時の戦死者は行きたくて真珠湾攻撃してないだろ、アメリカ人を殺したくてやったわけではないだろうから。


愚かな行為が、恐ろしい行為が、今もこうしてウクライナを襲っている、その事実を言ったことに違いは無いのだから、何もここまで目くじら立てると、逆に世界から特異な目で見られてしまうと思うし


ゼレンスキーの真珠湾攻撃には過剰に反応して、ロシア広報の「北方領土返還の議論を二度と出来ると思うな」には、さほど反応しなかったのが不思議に思えてします。

強い者には何も言えないって偏った日本のイメージを植え付けるだけ!


真珠湾攻撃が奇襲攻撃であったかどうかとか、民間人が犠牲になったかどうかではない。


米国向けに演説をするということは、その同盟国である日本にも内容が共有されることは想定できるはずであり、ロシアによる侵攻によって国家存亡の危機にさらされている状況を打破するために、その日本も含む西側諸国に支援・協力を呼びかけているわけでありましょう。


だとすれば、その支援という名の命乞いをする相手の一つである日本側の神経を逆なでするような発言をするというのは、ゼレンスキー大統領は主権国家の統治者としての資質に欠けると言わざるを得ないと思います。


ゼレンスキーは平和な日常に突然空爆を受ける恐怖を語っているのであり、攻撃の意図を語っているわけではない。

もしゼレンスキーが日本で原爆や東京大空襲の話をした場合にアメリカ人がどういう反応をするか見てみたい。

ゼレンスキーの発言にウクライナを応援する気がなくなったという程度の人はそもそもこの問題の本質を理解していない役に立たない人で、ロシアを利する大局観のない人だ。

ゼレンスキーが何を言おうと民間人がロシア軍に無差別に虐殺されていることのみがこの問題の本質だ。

なお、ニューズウィークもSNSのネトウヨの反応をさも日本人全体の反応かのように書くのはやめてほしい。

これほど詳しく真珠湾攻撃を語れる人は特別に真珠湾攻撃に強い思い入れを持っている人達で、一般社会ではあまり見かけない。

それと「紳士的」攻撃をしたわけではなく、国際法に準拠した攻撃をしたということだと思う。


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